メタノール対応舶用エンジンの生産体制を整備
日立造船マリンエンジン株式会社(以下、HZME)は、このほど、メタノールを燃料とした舶用エンジンの生産に向け、本社兼工場にメタノール供給装置などを設備投資することを決定しました。
船舶の主機関である舶用エンジンは、海運・造船分野における GHG(温室効果ガス)削減に重要な役割を担っており、従来の重油焚きから LNG、メタノール、アンモニア、水素などの新燃料への転換が急務となっています。中でもメタノールは、アンモニアや水素と比べて取り扱いが容易であるため、LNG に次いでメタノール対応の舶用エンジンの開発が、舶用エンジンにおける世界最大のライセンサーである MAN Energy Solutions SE(ドイツ、以下、MAN)などを中心に進められています。
当社は、親会社である日立造船株式会社がMAN から受注したメタノールに対応した二元燃料テストエンジン(4S90ME-C10.5-LGIM)の製造を受託しており、HZMEの本社兼工場で製造や陸上試験による技術検証を行います。本設備投資は同テストエンジンの陸上試験のためだけでなく、メタノール対応二元燃料エンジンの生産体制を整えるためのものです。
メタノール対応の二元燃料エンジンは、一部のエンジン型によっては既に実装されているほか、就航船に搭載されたエンジンのメタノール焚きへの改造や、新造船向けの発注も数多く計画されており、メタノール対応二元燃料エンジンの需要は世界的に拡大しています。
また、グリーンメタノールを燃料とした場合、重油に比べ「Well to Wake※」ベースで CO2 排出量を 90%以上削減でき、海上輸送のカーボンニュートラル化や環境負荷低減に大きく貢献できます。
国際海事機関(IMO)は、国際海運分野からの GHG 排出量を 2050 年に半減させ、今世紀中早期にゼロにすることを目指す「GHG 削減戦略」を 2018 年に採択していましたが、2023 年 7 月には目標を大幅に引き上げ、2050 年頃に実質ゼロを目指すことを新たに採択しました。
日立造船株式会社および当社は、舶用エンジンの燃料転換に向けた技術開発に積極的に挑戦し、国際海運・造船業界に貢献していきます。
- 海運業界における排出量を評価する際に用いられる考え方であり、Well(油井等)から Wake(航 跡)まで、すなわち燃料の製造から船上での使用までの全過程と、そこで発生するすべての排出 物の総和を指します。
なお、本設備投資の概要は以下のとおりです。
1.導入設備: メタノール供給装置(1台)
メタノール貯蔵タンク(容量:約 300 kL)
サービスタンク(1基) など
2.投 資 額:約 4 億円
3.設置場所:日立造船マリンエンジン本社兼工場(熊本県玉名郡長洲町)